筋膜リリースと骨膜リリース

リハビリ専門

筋膜リリースは様々なメディアにも多くとりあげられ、様々な書籍も販売され、理学療法士のみならず徒手療法の中でも今や一番有名な手技となっているかと思います。リリースという言葉も一番広めたかもしれません。

理学療法士としてその第一人者である竹井仁先生はご存じの方が多いかと思いますが、縁あって私が新人の一年間、毎月1回でしたがお世話になった先生でもあります。

ただ、竹井先生は一度も筋膜リリースを教えてくれることはありませんでした。

教えて頂いたのは理学療法士としてもっと大切なことです。

他にも筋膜リリースの元になったのかどうか定かではありませんが、治療戦略として筋膜に着目をし、1950年代には体系化されていたロルフィングというアプローチがあります。

ロルフィングは、コロンビア大学で生化学の博士号を取得したアイダ・ロルフ博士が開発したものです。

ロルフィングをすすめる訳ではありませんが、ロルフィングについて知りたい方はロルフィング協会のサイトがありますのでご確認下さい。

筋膜とは、筋肉を覆っている膜のことで、筋繊維同士の摩擦を防ぎ、筋肉の収縮を滑らかにする役割を担っています。

筋膜は骨格筋だけではなく、内臓や神経、血管などども繋がっており、全身をウエットスーツのように保護している点から「第2の骨格」とも呼ばれています。

内臓にも筋膜があるの?と思われる方もいるかと思いますが、内臓も平滑筋という筋肉で出来ていますので、至極当然かと思います。

その筋膜の主成分はコラーゲン繊維で、それ自体には伸張性はありませんが、網目状に配列することで伸張性を生み出しています。

コラーゲン繊維は可塑性に富んでおり、怪我や緊張など様々な内的・外的ストレスによって短縮や過緊張や他の筋膜と癒着して変形します。

筋膜リリースは穏やかな圧力と弾性・膠原線維を意識した持続伸張により膜組織のねじれを元に戻し、可動性や伸張性の改善を目的としたテクニックです。

筋膜リリースのゴールは筋膜制限を解除し身体平衡を元に戻して、影響を受けた領域に血流量を増やす血管運動神経の反応を引き出し(ヒステレーシス)、リンパドレナージを改善することで軟部組織固有感覚の感覚機構をリセットすることにあります。

筋膜リリースは今ではだいぶ一人歩きしているようで、ストレッチポールを含め、筋膜ローラーなどとても筋膜リリースとは思えない商品が低価格で購入できるようになっています。

私から見れば、ストレッチポールも筋膜ローラーもただのダイレクトストレッチだと思います。

患者さんを実際に触っていると、骨にも筋肉と同様に硬さと柔らかさがあるのを感じたことがあるでしょうか。

そしてその疑問について何となく解決してみようと思い調べてみると、すぐに骨膜リリースというものに出会いました。

骨膜リリースは、筋膜リリースと比較され、筋膜ストレッチや筋膜整体、はたまた骨膜リリースエステなど筋膜よりもっと深層からアプローチをするため効果抜群と商業目的に利用されています。

骨膜とは、骨の表面を覆ている膜のことで、関節軟骨と筋がついている部分には存在せず、関節部分では関節を覆う関節包とつながっています。血管や神経、リンパ管が走っており、骨へ血液を巡らせ、刺激や痛みなどを知覚します。すぐ下の骨質とはシャーピー繊維と言われる繊維で強く結合しています。

また骨膜は、2つの層に分かれており、外層は結合組織性繊維や弾性繊維からなる強固な繊維層になっています。

内層は、結合組織細胞や血管を多く含む、骨形成層があり、繊維層と比較すると柔らかくできています。

骨折をして出血をするのは周りの血管や筋肉などを損傷して起こることもありますが、骨膜が剪断されるため出血をします。

結合組織細胞は骨芽細胞に分化する性質を持つため、骨の形成や骨損傷の際の修復に重要な役割をはたしています。組織損傷と修復過程

筋膜の構成要素であるコラーゲン繊維は熱変性をもつ繊維であり、食肉を使って暖める温度の上下によって弛緩と収縮をすることが分かっており、単純にある程度の熱を加えれば弛緩します。

肉は火を通せば硬くなり、低温熟成という方法で肉を柔らかくする方法もあります。

コラーゲン繊維が一番緩む熱とそれを加える時間があります。

つまり、手をあてているだけでも熱が加わりリリースされます。そこに圧を加え(圧力鍋)熱を通しやすくします。さらに摩擦という手を加えればマッサージになります。

筋膜リリースという手技は決まった実施時間はありませんが、単純に時間をかけて行います。

骨膜リリースを謳っているストレッチやエステの方法をみてみると、筋膜ストレッチや筋膜リリースと何が違うのか全く分かりません。

実際にリリース時に骨膜がどうなっているか証明している訳でもないですし、多くの場所で筋膜を触らないと骨膜にたどりつかないのに筋膜リリースをしているだけではないかと思ってしまいかなり眉唾な要素が強い感じです。

また、筋膜は伸張性がある組織なのでリリースという概念は理解できますが、骨膜には本当に伸張性があるのでしょうか。

こうなってくると本当に言ったもん勝ちだなというのが本音なのですが、筋膜リリースにしろ骨膜リリースにしろも考え方が大切なんだと思います。

実際に何をやるかではなく、何のためにやるのか、何でやるのか目的を持って患者さんを触り、目的をもってリハビリテーションを実施するそれが大切なんだと思います。

先ほど、「骨を触って硬いと感じたことはありませんか」と言いましたが、触って硬いと感じた骨を実際にリラックスさせようとマッサージをしてみると柔らかくなります。

筋膜リリースでもなく骨膜リリースでもなく誰でも出来るマッサージです。

柔らかくなったことが良いのか悪いのか明確な答えはありませんが、リラックスさせた方が良いと感じ、リラックスを試み、リラックスが感じられた事、それが重要なんだと思います。

一つ一つ実際に患者さんを通して感じたものを丁寧に解決していく、その積み重ねがリハビリテーションなんだと思います。

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