組織損傷と修復過程

リハビリ専門

人体の各組織の治癒の過程について経時的な変化を中心に紹介します。
基本的に傷が治るということは、細胞が自己修復するか、他の組織に置き換わるかで修復されます。
実は、多くの細胞は自己修復するのではなく他の組織に置き換わることで修復します。
内臓の組織に例えれば、胃や肝臓は自己再生しますが、肺や脳は再生されません。

皮膚損傷の治癒過程(およそ10日~2週)

組織分解、壊死組織の排除(8時間)
毛細血管の再生 肉芽組織の形成(48時間以内/2日)
線維芽細胞の増殖(72時間/3日)
コラーゲン線維の増殖(4~6日)
瘢痕形成(2~4週)
小さい範囲ならば、皮膚の細胞は自己再生しますが、範囲が広ければ皮膚細胞の代わりにコラーゲン線維が皮膚組織に置き換わります。

腱損傷の治癒過程(およそ5~6週)

*腱損傷については諸説あり結論をえていません。
線維芽細胞の増殖(3~4週)
瘢痕形成(5~6週)
腱自体に再生能力はなく、腱様の結合組織(膠原線維など)による癒合と考えられている。
多くの場合、腱周囲組織の損傷も同時に起こしているため、周囲組織からの瘢痕形成による治癒となり、程度の差はあるが癒着という問題は必ず生じると考えられています。
つまり、癒着なしでは腱の癒合は起こりえないということです。
注意点
高齢者の骨折で多い橈骨遠位端骨折は、手指の腱癒着に注意が必要です。

筋損傷の治癒過程(およそ2週)

筋損傷の治癒で特徴的なのは、筋細胞は再生するということです。
しかし、損傷の強い場合や血行障害を伴う場合は瘢痕治癒となります。
衛星細胞→筋芽細胞の発芽(2~3日)
筋管細胞の形成(5~6日)
筋線維の再生(2週)

骨折の治癒過程(骨のより時間経過が異なる)

線維芽細胞の形成(6時間)
骨膜再内層の細胞増殖(2日)
骨折部への毛細血管の侵入(3日)
類骨組織の形成 骨膜下の骨形成(6日)
線維芽細胞の軟骨芽細胞への化生(9日)
類骨組織の形成(16日/2週)
類骨組織や類軟骨組織による仮骨の形成(30日/4週)
骨折の治癒は、骨細胞の自己再生ではなくあくまで類骨と呼ばれる、骨の代わりになる組織による治癒になります。筋膜リリースと骨膜リリース

各骨の治癒期間

中手骨:2週 鎖骨:4週 前腕骨:5週 上腕骨骨幹部:6週 上腕骨骨頭部:7週
下腿骨・大腿骨:8週 大腿骨頸部:12週 

軟骨組織の治癒過程(およそ6~8週)

注意点
動物実験のみでの考察になります。
幼年ラット:関節軟骨細胞の反応性分裂が起こり修復
若年ラット:関節軟骨細胞の分裂に限度があり、軟骨細胞による修復
成熟ラット:軟骨組織は作られず、関節軟骨細胞の分裂も起こらない。
      表面は結合組織で埋められ、内部は骨細胞による修復
*損傷の深さや広さによっても異なるため、一様の修復過程はない

靭帯損傷の治癒過程

損傷靭帯によって大きく異なり、膝関節の内側側副靭帯は回復しやすく、強度的には問題があるが、受傷後3週間で疼痛なく歩行可能。
関節内の靭帯である前十字靭帯の自然治癒は期待できず、放置したままでは変性し関節破壊につながる。

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