膝折れに対するDirectionアプローチ

リハビリ専門

膝折れというのは、歩行時に膝関節の伸展を保持することができず、ガクッと力が抜け歩行が困難になる状態のことで、ここでは、荷重に抗して膝が伸展できず、屈曲したまま歩行をしている状態や脳血管疾患等にて随意的にコントロールできないような異常歩行(ダブルニーアクションなど)も含みます。

Directionアプローチで捉えたとき、膝折れが起きるという事はどういうことか。

それは単純に前に歩くからです。

前に歩くということは、膝関節には前方への力が加わりますので、おのずと膝関節は折れやすくなります。
その前方に加わる力の方向を制御できない状態ということです。

膝折れ 異常歩行

前に歩いた時の関節にかかる方向

股関節には後方への方向(A
膝関節(B)足関節(C)には前方への方向が加わります。

膝折れ 異常歩行

後ろに歩いた時の関節にかかる方向

股関節はには前方への方向(A
膝関節(B)足関節(C)には後方への方向が加わります。
注意点
股関節の実際の動きの方向と力が加わる向きが違います

図をみて頂ければ簡単に解るかと思いますが、踵を接地し、足底に荷重がかかっていくと、股関節は後方に向かう力が働きます。
逆に、膝関節と足関節には前方へ向かう力が働きます。

では、後ろに歩くとどうなるか、方向は必然的に図のように逆向きになります。

Directionアプローチでは悪い方向があれば、それと逆の方向に動かすということがアプローチの手段になります。

理学療法士が学校教育で習ってきたことは、「できないことを繰り返し行う」というアプローチが基本的な考え方でしたが、できないことを繰り返し行うことは患者さんにとっては苦痛です。
そんな苦しい事はしなくても、できることだけを行うことで動作は改善できます。

そのため、膝折れを起こして歩けない方や、膝関節を屈曲しながら歩いてしまうような患者さんにどんなリハビリを行えば良いかというと、後ろに歩くだけです。

平行棒などの捕まるものがある方がきちんと方向を確認できますが、平行棒がなくても、背もたれのある椅子やテーブルを利用するだけで可能です。
必ずしも歩く必要はありません。
Directionアプローチは方向の再学習ですから、一歩足を後ろへ引き後ろへ下がり、また一歩前に踏み出して元の位置に戻るという運動を左右交互に繰り返すことで十分な運動になります。

大切なのは歩行という動作を行う事ではなく、方向に注意をするということです。
それだけで膝折れを改善することは可能です。

後ろに歩くときに必要な機能は何か。

股関節の伸展筋力(下肢を後ろへ引く動作)と足関節の底屈筋力(つま先から床へ接地する動作)が必要な機能になりますので、後ろ歩きだけでは不安という方は、準備運動として股関節の伸展運動と足関節の底屈運動を行って頂くと良いかと思います。
後ろへ歩くことができるか評価し、その方がどのように歩くのか想像することも可能です。


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