このところ良く患者さんから聞く言葉の一つにスクワットがあります。
患者さんに聞くと、転倒予防体操やフレイル予防などの運動として、理学療法士が公的な体操教室などで教えているようで、高齢者にも簡単にできる運動として浸透してきているようです。
ですが、患者さんからは「スクワットはした方がいいですか」と聞かれます。
本当にした方がいいのでしょうか?
答えはスクワットはやらない方が良いです。
なぜやらない方がいいか、教えている方法が悪いからです。
方法が良ければそれなりの効果を発揮することは可能ですが、教えている方法が悪ければ痛みの原因になります。
教えるときは正しい方法で教えているかもしれませんが、方法を間違えると痛みにつながるという事は教えていません。
そこが問題です。
スクワットが高齢者に与える影響を説明します。
なにが違うか2つの図を見比べてみて下さい。
若い人のスクワット
腰椎が伸展、骨盤が前傾しているのが解ります。
高齢者のスクワット
腰椎の伸展や骨盤の前傾が不足しています。
加齢にともなう骨の変形があるためできません。
スクワットは膝関節を屈曲していく時に、つま先より膝が前に出ないように曲げていきます。
つまり、お尻をできるだけ後ろに突き出して行くように膝を曲げていきます。
その時どこの動きが一番必要かというと、腰椎の伸展です。
スクワットによる骨盤の動き
A:若い人のスクワット
骨盤の前傾(a)とともに腰椎の前弯が増大し、前方へ
(b)重心をもっていくことができます。
B:高齢者のスクワット
骨盤の十分な前傾が起きず、重心が後方(b)へ移ること
で骨盤の後傾(a)を増長する動きを生み出します。
結果、胸椎の伸展と膝関節の屈曲に過剰な負荷がかります
もともと高齢により、脊椎の間隔が狭くなり脊椎の動きが悪くなっているところに、無理に動きを出そうとするわけですから、負担はかなり強くなります。
ですから、高齢者にとってスクワットは負荷が強すぎる運動、つまりやりすぎです。
スクワットによる身体にかかる方向
A:運動方向
B:脊椎の伸展
C:股関節の屈曲
ただ、公的な体操教室で教えている時は、実は椅子の背もたれなどに捕まって行うように教えられているかもしれません。
なぜつかまる必要があるのか、ただ転ばないようにするだけではありません。
その説明がないのです。
背もたれなどに捕まることで何が起きるのか図をみて頂ければと思います。
高齢者が行うスクワットの方法
背もたれを把持することで、身体重心を前方(b)へ誘導することができ、結果、骨盤の前傾(a)を助ける働きをします。
この方法であれば、やりすぎになりませんので、効果のある運動になるかもしれません。
ですが、必ずやらなければいけない運動かと言えばそうではないと思います。
スクワットは関節にとって複合運動になるため、各関節の負荷をそれぞれコントロールすることが出来なくなり、痛みへつながりやすくなります。
各関節への負荷がきちんとコントロールできる単関節の運動の方が痛みにつながらず行えるため、高齢者にとっては重要になります。
私が紹介してるDirectionアプローチで行う運動は、スクワットで必要な単関節の運動を紹介していますので、まずは基礎的な筋力や関節の動きをつけるために行って頂くと良いかと思います。
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