安静と廃用

リハビリ一般

痛みの急性症状を取るために大切な方法としてRICE処置というものがあります。

RICE処置というのは、Rest(安静)、Icing(冷却)、Compretion(圧迫)、Elevation(挙上)の4つの頭文字をとったものです。
良くプロ野球の投手がピッチング後に肩を冷やしている、スポーツの現場では当たり前に行われることです。

ですが、病院ではこれが当たり前に行われることはありません。
なぜでしょうか。

スポーツの現場で骨折をしたらすぐに冷やします。必ずRICE処置をします。
そのために事前にトレーナーは準備をしています。
そして病院へ連れていき骨折の手術をします。
ですが、多くの病院では手術をした後はRICE処置はしません。
痛みが強ければロキソニンなどの内服薬が処方されます。

手術によって、皮膚や筋肉を切除することは、意図的にケガを負わせている状態です。
ですから、術後の症状は急性症状といっても過言ではなく、RICE処置をすることは当然のことです。

スポーツによる骨折も高齢者の転倒による骨折もどちらも骨折に変わりはありません。

私が一年目として整形外科のチームで仕事をしていた時、手術創周辺の腫脹と発赤でじっとしていても痛みが強く、動かすこともままならない患者さんがいました。
当然、看護師さんや医師は患部を冷やすことはしません。
氷嚢のための氷はたくさんあるのに。

その患者さんに安静を保ちたいとチームのリーダーに相談をした所、大反対されました。
先輩が言うには、「安静にしたら廃用を起こす」「そんなことをすれば廃用を起こして、退院がのびてしまう」、「廃用を起こさないためにとにかく痛くても起こしなさい」ということでした。

つまり、リハビリテーションを大切にする病院、リハビリテーションが積極的に行なわれている病院ほど、リハビリテーションの成果によって退院はほぼ決まります。
退院をさせる責任は医師にあるのではなく、リハビリテーションにあるのです。
そのため、理学療法士にとって廃用は天敵で、安静=廃用というのは常に頭の中にこびりついています。
ただ、廃用という言葉が一般的に認知されてきている今では、安静=廃用というのは皆さんにも理解できることになっているかと思います。

ですが、安静と廃用というものは別のものとして区別しないといけません。

安静というのはあくまでRICE処置の意味する局所の安静であって、全身の安静ではありません。
廃用というのは全身性の安静から引き起こされる状態です。

専門家であるはずの理学療法士ですら誤解をしています。
局所の安静を保ちながら、いかにベッド上で全身運動を行い廃用の予防をはかることが正しい選択かと思います。

廃用に対して使われる言葉過用という言葉があります。
過用というのは単純にやりすぎです。

リハビリで一番してはいけない事が実はこの過用です。
なぜなら、廃用はリハビリをしなくても起きますが、過用はリハビリをするから起きるのです。
過用によって、患者さんのケガや病気の治療が進まないという事は、理学療法士として一番注意するべきことです。

良く患者さんに痛くても運動をした方がいいですかと聞かれます。
高齢の患者さんが抱えている痛みの多くは慢性的な症状です。
ですが、局所の安静を保つことは、慢性的な症状にも大切です。
慢性的な痛みでも、日によって、時間によって痛みが変わることがあります。
痛みが強いときは無理に運動を行わず、安静を保って下さい。
病院に入院をしてない限りは、ご自分で生活をしないといけません。
生活を自分でしている限りは、廃用にはなりません。

もし、ご家族に骨折をして入院されている方がいましたら、すぐに看護師さんや理学療法士に冷やすことをお願いして下さい。術前も術後もとにかく冷やすことが大切です。
痛みがあれば冷やす、安静を保つ、それが一番の薬です。(痛みがある時は温める?

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