恩人~私を育ててくれた患者さん②

リハビリテーションの啓発

私を育ててくれた患者さんの2人目は、PTとして初めて入職した病院でおよそ半年が過ぎた頃に担当した患者さんです。
病院や理学療法士としての仕事に少し慣れてきた時期でした。

その患者さんは変形性股関節症により、40代後半に片側の股関節全置換術を実施しており、そこから約7年ほど経ち、反対側の股関節全置換術を実施するために入院をされてきた方になります。

医師からは術後8週で退院できればいいとのことでしたので、それを目標にリハビリを実施しました。また、1人目の恩人の時に立てた、患者さんにできないことはさせないという方針のもと、その後はリハビリを実施していたので、その方にも同様にリハビリを実施しました。

結果からお話すると、患者さんは約4週で退院しそのまま仕事にも復帰することができました。

それだけを聞くとただの自慢話のように受け止められるかもしれませんが、4週で退院をさせることができたという自負が私を育ててくれた訳ではありません。

1人目の時と同様にその患者さんからかけて頂いた言葉が私を育ててくれました。

その言葉とは、「こんなにやさしいリハビリを行って、こんなに早く良くなるなんて思ってもいなかった」とのことでした。

患者さんは言葉を続け、片側を手術してから約7年も時間が経ってしまったのは、手術が嫌で先延ばしにしていたのではなく、その時のリハビリが辛くて、ここまで時間が経ってしまったというものでした。
「痛くても痛くても、無理やり関節を曲げられ、退院するまでずっと我慢をしないといけなかった」、「その思いをもう一度するぐらいなら股関節の痛みを我慢する方が楽でした」とのことでした。

そして、どうにも痛みが我慢できなくなったので辛いリハビリを受ける覚悟で手術に踏み切った所、いざリハビリをしてみると本当にこれがリハビリなのと思うぐらい、一度もリハビリで痛いという思いをすることがなく、むしろ「本当にこれだけでいいの」と疑うぐらいだったとのことでした。

そして最後に、「こんなリハビリならもっと早く手術をすれば良かった」と。

私はその言葉を聞いたとき、はじめて自分がしようとしていることは間違いではないんだと確信を持つことができ、これからも患者さんが我慢するようなリハビリはさせない、出来ることだけをさせて患者さんを良くしていこうという理学療法士のスタンスを、今もなお続けることができているのはこの患者さんのお陰です。

ただ誤解を招くかもしれないのでお話しますが、7年という時間は手術の方式や薬の作用など、医療の総体的な進歩があり、あくまでそのことも患者さんを早く良くした結果です。
リハビリ環境もその時とは比べられないほど変わっていました。
ですが、この話から15、6年経っていますが、その時から、リハビリテーションはさほど進歩していなようです。むしろ衰退してきているように感じます。

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