腰痛の原因は種々あるかと思いますが、方向学的に捉えた場合、骨盤と体幹への後方向の力が加わること(骨盤後傾と体幹屈曲)で痛みが生じます。
視覚で捉えると図のようになります。
A:体幹の屈曲
B:骨盤の後傾
後方への方向が問題になるため、それを改善するためには逆の前方向への運動を行えば良いという事になります。
歩くという事は、前方向に力が加わります。そのため身体は、体幹の伸展、骨盤の前傾方向に向きがあります。
年齢とともに後方向へ身体の向きが向いていくため、体幹の伸展、骨盤の前傾を維持するために歩くという運動はとても大切な運動になります。
前方へ動かす、つまり骨盤を前傾し体幹を伸展するという事は、若い人にとっては問題のない動作ですが、筋力が低下していたり、腰椎や仙骨などの骨の変形が著しい方にとっては難しい動作になります。
そのような方でも行える運動です。(Directionアプローチで行う運動)
腰椎伸展の運動
骨盤の回旋を利用して、腰椎を伸展する運動です。
背臥位で行います。
片方の足を反対側の足首のあたりに乗せ、足を組みます。
両手でしっかり身体を支え、足を組んだ方向へ骨盤を回旋させます。
片側を10回行ったら、反対に組み換えて反対側を10回行います。
回数は目安です。
1、2回でも大丈夫です。
腰椎が伸展しているのを感じられることが大切です。
何の筋肉をトレーニングしているかなど細かく考える必要はありません。
動きの方向が正しいかを確認すること、患者さん自身にも腰椎が伸展しているのを確認させることが大切です。
腰痛の原因は腹筋群の筋力低下により、腹圧が低下したため生じるとおっしゃる方も多いですが、Directionアプローチで捉えると実は逆です。
腰痛の原因は、体幹の伸展つまり脊柱起立筋群の筋力低下により、抗重力姿勢の保持が困難になるために生じるという事です。
体幹への後方の力の向きを修正するためには、背中が反れないと修正できません。
方向学的に捉えると、腹筋は屈曲を増強する運動です。
そのため、脊柱起立筋群の運動を行います。(Directionアプローチで行う運動)
高齢になればなるほど、脊椎の間隔が狭小化していきます。
狭小するのは椎体一つ一つの骨の間隔だけでしょうか。
椎体一つ一つには靭帯や筋肉、関節包もついています。
その靭帯や筋肉など軟部線維はどうなるのでしょうか。
脊椎の間隔が狭くなれば、それらの軟部組織は短縮していきます。
運動生理学的に考えると、筋力が発揮されるには、その筋肉に最適な長さが必要になります。
長くても短くても筋力は低下します。
短縮した筋肉はどうなるのでしょうか。
硬結します。
硬結とは筋繊維の架橋が硬く結ばれた状態です。
運動生理学的に筋肉が収縮するということは、筋繊維を構成する一つ一つの架橋が動くという事です。
「理学療法士はマッサージ師ではないのでマッサージはしません」と良く患者さんに説明をしている理学療法士もいますが、それはただマッサージの目的を理解していないだけかと思います。
筋力をきちんと発揮させるためには、筋硬結を取り除く事が重要です。
硬結を取り除くために必要な事はマッサージです。
物理的に剪断力を加える事です。
筋収縮を促す事で、筋硬結を解消することも可能ですが、筋硬結がどこにあるか、どんな状態か確認することなく、ただ運動すれば良くなるというのは結果論でしかありません。
また硬結は筋肉のみではなく、軟部組織にも起こります。
筋肉以外の硬結はほっといて良いでしょうか。
Directionアプローチについて話をした通り、大切なのは目的を持つという事です。
マッサージであろうと何であろうと、患者さんが良くなるために必要な事はきちんと行います。
それが患者さんを良くする第一歩です。
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