車椅子の足漕ぎができない患者さんにリハビリプログラムを立案することを例にあげ、方向学的に捉えるとはどういうことか説明していきます。
一般の方には馴染みがないので理解しづらいかとは思います。
車椅子の足漕ぎの際、一番重要なことは何かと学生などに聞くと「膝関節の屈曲です」と答える方が多く見受けられます。
そのため、足漕ぎができるようになるために、リハビリのプログラムを立案してもらうと、膝関節の屈曲運動を立案します。
方向学的に捉えた場合、それは正解ではありません。
では、方向学的に捉えた場合、何をプログラムとして立案するのかと言うと、股関節の屈曲運動になります。
どうしてか。
理由は、車椅子が前に進むのに必要な方向は前方向だからです。
当たり前ですね。
筋肉が作用する運動の方向だけを考えて見てください。
膝関節の屈曲の運動方向は体幹に対して後方であり、車椅子の前方とは反対です。
それに対して、股関節の屈曲の運動方向は、身体の前方にあり、車椅子が前に進むために必要な方向、前方向と同じです。
実際に、足漕ぎができる患者さんにわざと弾性包帯などを使って骨盤とバックレスト(背もたれ)を固定し、股関節の屈曲を抑制してみると、たちまち足漕ぎができなくなります。
ご自分で試してみると良いかと思います。
方向学的に捉えるということはどういうことかというと、動くために必要な運動の方向をみるということです。
見なくても考えただけで解ります。
なぜか。前に進みたいのだから、方向は必ず前方です。
難しくないですね。
簡単で、誰にでも解ります。
違いは「目的を持って観察しているか」、それだけです。
図解
もう少し図を使って詳しく方向を確認します。
股関節屈曲の場合の方向
股関節屈曲によって生じた身体の方向をA
股関節が屈曲した時の力の方向をB
車椅子に作用する方向:A+B
膝関節屈曲の場合の方向
膝関節が屈曲したときに身体に生じる方向をA
膝関節が屈曲した時の力の方向をB
結果は見ての通りなので車椅子に作用する方向は省略します。
コメント
[…] そして、身体に対してそれらの方向を生み出す運動は(A)体幹の伸展、(B)股関節の屈曲になりす。(B)が体幹の屈曲ではない事は、車椅子の足漕ぎについてお話したのと同様です。(方向学的に捉えるとは) […]