痛みに対する機能学的アプローチ

リハビリ専門
Neurons and nervous system. 3d render of nerve cells

痛みに対する基本的なことを知ることは、より合目的的なアプローチを可能にします。
ここでいう機能学的なアプローチとは、生体がもつ基本的な機能を知るということであり、基本的な機能を理解し、その機能に対して固有にアプローチすることができるようになることを目的としています。
そこでまずは、痛みに対する基本的なことについて紹介します。

疼痛には急性痛慢性痛があることは、何となくご存じかと思います。
では急性痛と慢性痛とは何なのでしょうか。

急性痛は大きく分けて①組織損傷性疼痛(一次痛)②炎症性疼痛(二次痛に分けることができます。
組織損傷の修復後の機能障害(短縮、拘縮)に運動刺激が加わることで発症する運動痛も一次痛になります。
組織損傷の修復については別の投稿にありますのでご確認下さい。(組織損傷と修復過程

慢性痛持続的に疼痛刺激が加わる病的状態で、痛覚系に機能や構造の歪みが起こり、触覚系などとの間に生じた混戦状態にある痛みになります。
この病態像は複合性局所疼痛症候群(CRPS:conplex regional syndrome)に分類され、③神経因性疼痛と言います。
かなり特別なケースになるかと思います。

そして、急性痛と慢性痛が混在したような、④精神因性疼痛(心理的ストレス)があります。

そのため、多くの方が抱えている痛みは、急性痛に分類されるものが多く、実は慢性痛というものはあまり多くないことが伺えるかと思います。

痛み傷害から組織を守るための生体の警告信号で、必要不可欠な反応になります。
人が物に触れたり、目で見たり、耳で聞いたりする感覚と変わりないものになります。
物に触れれば触覚系の神経伝達を通じて脳に伝えます。
見たものは視覚系の神経伝達で脳に伝えます。
聞いたものは聴覚系の神経伝達で脳に伝えます。
痛みは痛覚系の神経伝達で脳に伝えます。

神経伝達というものは、固有刺激に対して興奮をし、その興奮を脳や中枢神経に伝えることです。
つまり、痛覚を伝える神経の興奮を抑えれば、痛みは感じなくなるということです。

この刺激を伝えるという役割において痛みを分類した場合、痛覚系受容器の刺激による興奮で痛みを感じるものが一次痛になります。
一次痛の特徴は、部位や時間がはっきりしている瞬時の疼痛です。

そして、ポリモーダル受容器といわれる受容器から伝えられる痛みが二次痛になります。
ポリモーダル受容器とは、機械的刺激、化学的刺激、熱刺激などを伝える受容器で、二次痛の特徴は部位が曖昧で持続的な遅発性の疼痛になります。

損傷部位には炎症性メディエーターと言われる発痛物質が産生され、血管に作用して発赤、発熱、腫脹を起こさせ炎症状態になります。この炎症状態を二次痛として伝える役割が、ポリモーダル受容器になります。

また、疼痛などが誘因となり発生するものに、筋スパズムと筋硬結があり疼痛が悪循環する要因になります。

筋スパズムには、一過性の防御的筋収縮と持続的な筋緊張亢進状態があり、急性的な筋スパズムと慢性的な筋スパズムに分けられます。
慢性的な筋スパズムは、二次的循環障害を引き起し筋内浮腫を発生させ、筋内浮腫が持続することで筋硬結へ移行するとされています。そのため、筋スパズムと筋硬結を改善すれば、疼痛は緩和されます。

痛みは神経伝達により、脳が痛みを感じている状態です。
疼痛部位を評価することで、どんな刺激が脳に伝えられているのか判断し、その固有刺激を取り除くためのアプローチを具体的に行うことが必要です。
つまり、痛みの原因が、腫脹によるものなのか、筋スパズムなのか、筋硬結なのかを捉え、目的に沿ったアプローチが選択されているかどうかが大切です。

物理療法の一つである超音波治療はそれらの固有刺激に対して、個々にアプローチが可能になります。
しかし、どの病院や施設でも、超音波治療が行える分けではありません。
超音波治療の生体に対する効果を理解することで、他の物理療法や運動療法などを用いても合目的的なリハビリテーションを実施することが可能になります。
そのため、必要であれば、超音波治療を理解して頂くことで、疼痛改善のためのリハビリテーションの一助になるかと思います。

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