変形性股関節症のリハビリテーション

リハビリ一般

変形性股関節症の多くは、臼蓋形成不全などの先天性疾患を素因としたものであり疼痛や可動域制限を引き起こします。

また、臼蓋形成不全は女性に多く、そのため変形性股関節症も必然的に女性に多くみられるのが特徴です。

変形性膝関節症の多くは高齢者にみられますが、臼蓋形成不全にともなう変形性股関節症は、高齢者に限られた疾患ではありません。

若年者でも競技スポーツやマラソン、しゃがんだり立ったりを繰り返すような仕事、長時間の立ち仕事などで過度に負担がかかると疼痛を引き起こします。

高齢者の疼痛は関節の変形や関節面の狭小化が主な原因のため、関節可動域は骨性の制限となり、不可逆性のものになりますが、若年者の場合は関節の変形や狭小化は少ないため、疼痛や可動域の制限は筋肉などの軟部組織性のものになります。

また、軟部組織の中でも、靭帯や関節包などの非収縮性の組織による可動域制限は、筋性の制限のあと起こるとされているため、可動域制限や疼痛の原因はほぼ筋性のものになります。

疼痛を引き起こす部位は概ね、股関節がある足の付け根、つまり鼠径部が多く、鼠径部には大腿神経や動脈が走行しているため、筋の緊張によるそれらの圧迫により、疼痛が躍起され太ももや膝・臀部に疼痛がみられる場合もあります。

筋の緊張は腸腰筋や縫工筋・大腿筋膜張筋、股関節外旋筋群、大腿後面外側のハムストリングスにみられることが多く、マッサージやストレッチによって筋の緊張を緩和します。

若年者の疼痛にしろ、高齢者の疼痛にしろ関節可動域の制限を伴うと、ADL低下の著名な原因になり、関節可動域の制限はすなわち、関節面の狭小化が進んだ状態と判断できるため、いかに関節可動域の制限を予防していくかが大切になります。

逆に言えば、ある程度変形性股関節症の進行を自己の努力によって予防できる可能性があるということですので、日々の運動の習慣を維持することが大切かと思います。

関節可動域の中でも、股関節の伸展の可動域を維持することが大切になります。

何故かというと関節にはゆるみの肢位というものがあります。

関節周囲の組織が一番ゆるみ、関節が一番リラックスできる位置という感じです。

股関節にとってのゆるみの位置は股関節が軽度屈曲した位置であり、そのゆるみの位置に関節が位置されやすく、逆にゆるみがあるため、そのゆるみの位置では関節面にストレスがかかりやすくなっています。

つまり、関節面のゆるみの位置で関節の変形が進行しやすくなり、それを予防するためには股関節伸展の可動域が重要になります。

股関節が伸展できなくなると、屈曲方向にしか運動が不可能になるため、常にゆるみの位置を強いられることになります。

そのため、股関節の伸展制限を予防する運動とその他の可動域制限に対する運動を紹介していきます。

股関節の伸展制限を予防する運動

膝関節の屈曲運動

腹臥位になります。

腹臥位にて膝関節の屈曲を行います。

股関節を90°程度屈曲させて下肢を上へ持ち上げる運動が股関節の伸展筋である大殿筋をトレーニングする方法ですが、2つの運動要素が加わると手間になるため、膝関節の屈曲のみでも十分だと思います。

大切なのは継続することです。手間になる運動はいずれしなくなります。

できるだけ負担がかからず簡単な運動が継続できる運動です。

股関節の外転運動

膝関節の屈曲運動のまま続けて行います。

股関節の外転筋である中殿筋をトレーニングする運動は他にもありますが、姿勢をかえることも手間が増えることなので、同じ姿勢で続ける運動をします。

腹臥位のまま両足を外へ開いたり閉じたりします。

その他の関節制限を予防する運動

股関節屈曲制限を予防する運動

股関節の屈曲制限の一番の原因は股関節外旋筋群の伸張性低下にあります。

そのため、股関節外旋筋群の運動を行います。

また、股関節屈曲筋の筋力低下も股関節の屈曲制限になるため、股関節の屈曲筋である腸腰筋のトレーニングも行います。

外旋筋群や腸腰筋のストレッチを進める理学療法士もいますが、ストレッチより運動の方が筋の緊張を緩和したり、柔軟性を維持できると思っていますので、運動を主体に紹介いたします。

私が紹介していますDirectionアプローチ(Directionアプローチで行う運動)にて股関節の屈曲と外旋はトレーニングできますのでご参照下さい。(股関節の機能を改善するDirectionアプローチ)

股関節の内旋制限を予防する運動

股関節の内旋筋力は股関節90°の時が一番筋力発揮できるとの研究報告もあるため、座位で行います。

股関節屈曲90°に近い、背臥位にて股関節を屈曲させた膝を立てた位置での運動も効果はあるかと思います。

ただし股関節の内旋可動域の制限はADL上は大きな問題になりにくいため、ほかの運動を優先するほうが良いかと思います。

ただし、股関節の内旋運動は骨盤底筋群という体幹を構成する筋肉をトレーニングすることができるため、行うことは重要なポイントになります。

股関節内転筋群の運動

臼蓋形成不全は必ずしも変形性股関節症へと移行するものではありませんが、変形性股関節症の一番の要因ではあります。

そのため、関節の変形が進むまでそういう状態に自分があることに気付かないこともあります。

そのため、股関節一つ一つの可動域を維持する運動はできなくとも、歩行運動とくに歩幅を大きくした歩行をすることで、股関節の伸展を維持することはある程度可能になります。

「あの角までは少し大股で歩こう」「あの角までは少し早く歩こう」「たまには一段階段を飛ばして登ろう」など日々の生活の中で自分の動作に変化を与えることは重要なことかと思います。

そうすることで自分の体の変化に気づくきっかけを与えてくれるかもしれません。

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