リハビリテーションの依頼で多く見受けられる症状に、肩が痛くて腕が上がらないといことを訴える方がいらっしゃいます。
俗にいう五十肩です。
ここでは、私が行っているDirectionアプローチという方法で痛みを取り除き、肩の動きを良くするリハビリテーションを紹介したいと思います。
腕を上げる時、多くは図のように少し外側に開いて(外転)上げます(屈曲)。
どうして少し外側に開いて上げるのかというと、生理的な動きのためというのが理由かと思います。
簡単に言ってしまえば、上げやすいのです。
そのように体の仕組みができています。
その仕組みは靭帯であったり筋肉であったり、骨の形であったりその人それぞれで違いがあります。
人を構成する要素はおおよそ変わりありませんが、形は人それぞれです。
ですから、皆さんは姿や形がことなるのです。
実は、その少し外側に開く上げ方が痛みを生じる原因の一つになっています。
痛みの原因のうち、インピンジメントによる痛みというものがあります。
インピンジメントとは筋肉などの軟部組織が挟み込まれて痛みがでることの総称です。
それが、肩の痛みの原因になっています。
肩関節の場合、肩甲骨の肩峰とよばれる部分と上腕骨の骨頭とよばれる部分でこのインピンジメントがよく起きます。
この肩峰と骨頭は、腕が外側に開くことで隙間がより狭くなります。
外側に開いたことで隙間が狭くなり、さらに腕を上げていくことでその隙間がさらに狭くなりインピンジメントが起きやすい状態になります。
そのため、肩関節は外旋をすることでこのインピンジメントを回避して肩関節を挙上させます。
特に関節を構成する要素に問題がなければ、骨頭の動き(外旋)は滑らかに動きインピンジメントを起こすことはないのですが、何らかの原因で骨頭の動きが悪くなれば、インピンジメントを起こすリスクが高まります。
肩の痛みが原因で腕が上がらない場合、このインピンジメントのリスクを軽減することで、肩の痛みを抑えて腕を上げることが可能になります。
では、インピンジメントのリスクを抑えるために何をすれば良いか。
先ほど申し上げたように肩の痛みは、肩を少し外側に開いて腕を上げるからインピンジメントを起こし痛みを生じます。
外側に開かないようにして腕を上げれば、インピンジメントを起こすリスクが軽減し腕を上に持ち上げることが可能になります。
その腕を外側に開かないで上げる運動を続けることで、骨頭の動きを悪くしている要素を改善し肩関節を構成する筋肉の働きを整え、痛みを軽減していきます。
理学療法士の仕事は、痛みがあっても動けるようにすることです。
痛みを根本的に取り除くことで一番必要なことは、一にも二にも安静です。
使わないことが一番の安静ですが、そういう訳にもいきません。
特に肩や足の痛みは、日常生活を送る限り、完全に安静を保つ事は難しいです。
また、安静を保つために完全に動かさないと、面倒なことに廃用という別の症状を呈します。
ですから、安静を保ちつつ適度に動かすとういうことが肝心です。
安静を保ちつつ適度に動かすというのは中々難しいことです。
安静を保ちつつ適度に動かすということは、痛みを伴わない動きをするということになります。
痛みがなければ、安静を保っていることになります。
これから、紹介する運動についても、痛みを我慢しながら運動を行う必要はありません。
運動によって痛みが出る場合は、一度休んで見てください。
一度休んで、痛みがすぐに消えるようでしたら、少しずつ運動を続けて見てください。
一度休んでも痛みがなくならず痛みが強くなるようでしたら、その運動はやらないようにして下さい。
他の痛みが出ない運動を続けて様子を見て下さい。
他の運動を続けることで安静と動きの改善が少し進めば、痛みの出た運動も再度行っても痛みがでないかもしれません。
肩の屈曲を改善する運動
肩関節の内転運動
- 肘関節を90度屈曲させます
- 手のひらを上に向けることで肩関節を外旋位に保ちます
- 体の側面と肘との間にタオルなどを挟みます
- 手のひらを上に向けたまま肘でタオルを体側に押し付けます
- そのまま5秒間ほど押し付けます
- それを5回程度繰り返してください
肩関節の外旋運動
- 肩関節内転運動と同じ姿勢を作ります
- 上に向けた手のひらにタオルを持ちます
- 体の側面に肘を当てたまま、タオルを両方の手で引っ張ります
- 5秒間ほど引っ張り続けます。
- その時、肘が体の側面から離れないように注意します
- それを5回ほど繰り返して下さい。
肩関節の伸展運動
- 肩関節の外旋運動と同じように手のひらにタオルを持ち少し引っ張った状態で保ちます
- そのまま肘を後ろへ引いていきます
- 引く際に肘が体から離れずどちらかというと肘を内側によせ胸を張るように引いていきます
- それを5回程度繰り返します
肘関節の伸展運動
- 肩関節の伸展運動と同じ姿勢を取ります
- タオルを少し引っ張った状態で両方の肘を体に合わせます
- 肘が体から離れないように意識しながら肘を伸ばしていきます
- 肘を伸ばすとタオルが体にあたると思いますので、あたったタオルをそのまま体へ押し付けていきます
- そのまま5秒間ほど押し付けます
- それを5回程度行います
肩関節の内旋運動
- 両方の手のひらをお腹に当てます
- 当てた手のひらでお腹を押します
- 押すことで肘が前側に動くことを感じてください
- そのまま5秒間ほど押し続けます
- それを5回程度行います
肩関節の内転屈曲運動
- 手と手を合わせて握ります
- 両方の肘を合わせます
- 肘を合わせるときに痛みがでると思いますので痛みがない程度で構いません
- 肘を合わせることで肩関節を外旋位に保ちます
- そのまま肘が離れないように手を上下に動かしていきます
- 痛みの程度に注意しながら、5回程度繰り返します。
肩関節の外旋内旋運動
- 肩関節の内転屈曲運動と同じように手と手を握ります
- 握った手を額に付けます
- 額から握った手を離さないように肘を開いたり閉じたりします。
- 肘を開いたり閉じたりすることで肩関節の後方の関節包をストレッチしていきます
- 肩関節の屈曲が改善してきて手を頭の後ろで組めるようになったら、手のひらを後頭部に当てたまま、肘を開いたり閉じたりしていきます。
そのことで今度は肩関節の前方に関節包をストレッチしていきます。
胸郭の回旋運動
ここまでくると肩関節の可動域はある程度改善してきているかと思います。
最後の仕上げの運動になります
- 横向きに寝ます
- 両方の膝を合わせて軽く足を曲げて、体を安定させます
- 下側の手を体より前に出して足と同じひように体の安定を図ります
- 肩と腰の位置に注意して下さい
- 肩が腰より前に出ていたり後ろに出ていたりせずに真っ直ぐ揃っていることに注意して下さい
- そのままの姿勢で上側の手のひらを頭の後ろに合わせます。
- 肘を体の後ろ側に倒して行き、体を後ろへ捻じっていきます。
胸郭が硬くなっている方は捻じる動きは少なくなっているので捻じれているのを感じる程度で大丈夫です
繰り返していくうちに捻じる範囲が広がっていきます
五十肩といわれる肩の疼痛や運動制限は、おおよそ炎症期、拘縮期、改善期と3つのステージを経ます。
炎症期の疼痛が強い時期はとにかく安静をはかることが大切です。
ただし前述した通り、安静期だから何もしないのではなく出来る運動(痛みの出にくい運動)は必ずあります。
出来る運動を行うことで安静を図りながら、二次的障害の予防を図ることが重要です。
また、運動をすることで血流を促し、体の中で炎症を引き起こしている化学物質を排出させる事ができます。
理学療法士の仕事は痛みを抱えながらでも運動ができるあるいは仕事を続けられるようにすることです。
炎症期が過ぎ、拘縮期のステージに症状が移れば、少し痛みがある運動でも行って大丈夫です。
拘縮期は炎症期よりも動きが悪くなっていきますが、症状が悪くなっている訳ではありません。
拘縮期では痛みが出たとしても、運動を止めれば痛みがなくなる痛みであれば運動は続けて大丈夫です。
積極的に運動を行ってみて下さい。
炎症期は症状の程度にもよりますが、夜も眠れない程度に痛みが強い方もいます。
ですが、一度のリハビリで痛みを軽減させることも可能です。
そのような理学療法士に出会えると幸せかと思います。
ここで紹介した運動は一度で痛みを軽減させることができる運動内容です。
一番重要な運動は、肩関節の内転運動と伸展運動です。
なぜか、Directionアプローチの基本は痛みのでる動作と逆の動作をすることです。
肩の痛みがでる動作は肩関節の屈曲運動と外転運動です。
リハビリに通っているけど痛みが良くならない、あまり何も変わらないと感じている方はぜひ実践してみて下さい。
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