肩関節の痛み、肩関節周囲炎に対して、Directionアプローチで捉えたとき、大切なのは、痛みのでる肢位には特徴があるということです。
その痛みの肢位というのは、パソコンを使用する際にマウスを扱うような肢位です。
つまり、肩関節を軽度外転、屈曲と肩甲骨が軽度外転・上方回旋した肢位です。
肩関節が軽度外側前方の方向にあります。
この肢位は現代人にとって一番とられる肢位で、スマートフォンを操る姿勢にもなります。
また、手に荷物を持つとき、ボタンを押すときなども同様の方向の肢位になります。
人は自分の前で手を使って物事をするので当たり前ですね。
身体にとって一番負担になることは同じ姿勢が続くということです。
パソコンを使用したり、スマートフォンを使用する時間は、それに集中するあまりにいつのまにか長い時間同じ肢位でいることに気が付かずにいます。
では、なぜその肢位が問題なのかというと、肩関節にとってその肢位はゆるみの位置になるということです。
ゆるみの位置(loose possition)というのは、関節にはそれぞれ関節が一番ゆるむ肢位のことです。
そのゆるみの肢位は本来関節にとって一番負担がない位置になり、その分不安定になります。
もともと関節は靭帯や関節包によって安定させています。
ゆるみの位置とは関節を安定させるための靭帯や関節包が一番ゆるむ位置にあるということであり、そのため関節が不安定になります。
そして、その関節の不安定性を補うために、筋肉に負担がかかるということになります。
肩関節周囲炎の痛みの原因は、固定のために働く関節構造体になんらかの損傷や器質性変化がなければ、多くの場合、筋肉が痛みの原因になります。
筋肉の動きが悪くなることで、肩関節の動き方が変わり、関節構造体の炎症を引き起こします。
肩関節の痛みの原因はこればかりではありませんが、Directionアプローチの目的である、方向を考えた場合のポイントになります。
矢状面からみたゆるみの肢位
肩関節は軽度挙上位になります。
そのため、肩関節の伸展運動を行います。
*矢状面=体を真横からみた面
前額面からみたゆるみの肢位①
肩関節が軽度外転した位置になります。
肩関節の外転とともに肩甲骨が外転位になります。
そのため、肩関節の内転と肩甲骨の内転運動を行います。
*前額面=体を正面からみた面
前額面からみたうるみの肢位②
肩甲骨からみた場合、肩甲骨が上方へ回旋した場合の方向は肩甲骨の挙上になります。
肩甲骨を下制する運動を行うことで、下方回旋への方向を促します。
Directionアプローチで捉えた問題に対して具体的に何の運動をすれば良いかというと、基本的に問題となる方向と逆の運動を行うということです。
肩関節に対して、内側後方へ運動を行うということです。
肩関節の外転・屈曲方向が問題になるため、それに対して、肩関節の内転・伸展運動を行います。
そして、肩甲骨の軽度外転・上方回旋に対して、肩甲骨の内転・下方回旋の運動を行います。
さらに、肘関節の屈曲も問題になるため、肘関節の伸展運動を行います。
これらの運動を行うことで、肩関節のゆるみの肢位で使用される筋肉と使われない筋肉とのバランスを取り、肩関節の動き方を修正し、痛みを取り除くことができます。
運動の内容は、単関節の運動をそれぞれ個別に行っても良いですが、複合的な運動として運動を行うことも大切です。
単関節運動として行う場合は、その運動方向へ運動を行えば良いだけですので簡単に説明をします。
一人でできる運動ですので、予防の意味でも行って下さい。
複合運動は別の項目で紹介します。(肩の痛みに対する運動)
肩甲骨の運動
- シュラッグ運動(肩甲骨の挙上・下制):肩をすくめる運動
- ドローイング運動(肩甲骨の内転・下方回旋):肘を曲げ、脇を閉めたまま肘を後ろへ引く運動
注意点:胸を少しはった位置で行います。
肩関節の運動
- ドローイング運動(肩関節の内転・伸展):肩甲骨の運動と同じです。
肩関節の内転運動は、肘を曲げた位置で身体と肘の間にタオルなどを入れ、脇を閉めるように動かしタオルをつぶす運動でも可能です。
注意点:手のひらは上に向けた状態で行います。
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